「寿司」と聞いて、あなたの頭の中にはどの様なイメージが浮かぶだろうか。日本の人にはたいていの場合、握り寿司が思い浮かぶだろう。けれども、アメリカの人には、おそらく海苔巻きが思い浮かぶことだろう。どうして、この様な寿司に対するイメージの違いがうまれてくるのだろうか。また、寿司はどうしてこれほどまでに、海外で人気が出たのだろうか。これらの事について、考察してみようと思う。
寿司はもともと中国から来たもので、魚が腐らないよう米の中に保存されていたところに起源があると言われている。室町時代に、中国から日本に渡った寿司は、魚と米を分けて食べる事を好む日本人の間で、だんだんとその姿を変えていった。握り寿司は、屋台が人気になった19世紀の江戸で食べ始められたと言われている。江戸の海岸で採れる新鮮な魚を使った寿司は「江戸前寿司」と呼ばれ、1923年に起きた関東大震災を境に、寿司職人が日本全国へ広まるのと時を同じくして寿司が日本全国へと伝わったという説がある。はじめは、魚と米が簡単に一緒に食べられるため、主に職人の間で流行っていた。当初、一つ一つを握るためにかかる時間と戦争中にマグロが取れにくくなったせいか、寿司は高価な食品とされていた。しかし、米を握る機械が開発されるとともに、だんだんと値段が下がり、日常的に食べられるようになった(1)。
寿司は1960年代にカリフォルニアへ旅立った寿司職人の真下一郎さんが、アメリカで初めて寿司を紹介した。はじめは、生魚を食べる事に不満や不安を持つアメリカ人が多く、人気が出なかった。しかし、真下さんの工夫で、寿司、それも巻き寿司が、カリフォルニアロールという名前を持って、生魚を含まない寿司が作られるようになった。アメリカでは、内側に海苔、外側に米という巻き方になっているが、これは日本とアメリカの文化の違いが原因であると言われている。のりという食べ物があり、それが食べられると言うことを知らないアメリカ人は、のりを紙のようにはがしてしまうことが見受けられた。そこで、アメリカ人が違和感無く食べられるようにと、日本で主流となっていない巻き方に変えたのだと伝えられている。カニ、アボカド、マヨネーズなどを含むカリフォルニアロールは高級な食べ物として売られ始めたが、今では、アメリカのスーパーでも買えるようになり、世界中で一番人気のある寿司なのであろう(2)。
1980年代になって、日本から車や電化製品が積極的に輸出されるようになり、アメリカではだんだん日本製品の人気が出るようになった。それとともに、人々の間で健康を重視する事が高まり、アメリカやヨーロッパで寿司レストランが見られるようになった。それは、油が少ない寿司は健康的な食べ物として人々をひきつけ、その人気を増してきた。このように、健康食であった寿司は日本食ブームを起こし、大豆やうなぎなど、日本ならではの食品がどんどんとアメリカに紹介されるようになった。けれども、やはり生魚がはじめ人気が出なかったように、日本の独特の食材はアメリカで簡単に受け入れられず、寿司ほどに世界で有名にならなかった(2)。
現在世界中のあちこちで見かけることのできる寿司だが、日本の寿司に比べると見た目や食材からしてかなりの違いが見られる。今でこそ、日本でも天ぷら巻きをはじめとする変わり寿司が見られるようになったが、アメリカでは日本人が普段使おうと思いもしないような食材が入っている。カリフォルニアロールの素材を聞くと、日本人なら小首を傾げたくなるが、フィラデルフィアロールにはクリームチーズを含むので、カリフォルニアロールの方がまだまだ普通な寿司に思えてくる。平岡清美さんが「ほとんどのアメリカ人にとってのお寿司とは、カリフォルニアロール(カニやアボガドの入った巻き寿司)に代表されるような巻き寿司です。お店独自の巻き寿司も多く、種類も豊富で、どんどん新しい巻物が開発されています。」と彼女のブログで書くように、アメリカ内でも様々な種類の巻き寿司が作られるようになってきている(3)。作られる寿司の場所による文化的な違いがあるからと、日本の伝統的な食べ物をこれまで以上に改造してしまい、外国人の中における寿司の印象を、日本人が思うものとは違う形にしてしまうのは、どういうことなのだろうか。ブロガーのひろさんの意見では、アメリカ人は「寿司のことをよくわかってるかと言うとまだまだ「???」かもしれない。」スーパーでアメリカ人の主婦に「マグロ」はどこかと聞かれ、「マグロ」は「ツナ」と同じだと言うと、彼女に「もういいです」と言われた。彼の経験からわかるように、寿司に使われている食材がアメリカ人に正しく理解されているとは言い難い(4)。
果たして日本人は、世界で展開される新しい寿司の形をどう思うのだろうか。銀座で有名な寿司屋の店長に、カリフォルニアロールについてどう思うのかと訪ねてみると、「めちゃくちゃだ。」と語る(1)。このような意見と同様に、世界中に日本料理か広まるにつれ、日本食の正しいイメージが保たれているかを確かめるために2007年に農林水産省が海外調査を始める予定だった。農林水産省は海外の日本食レストランへの認証制度を検討したが、「正しい日本食」を判断する統一の基準を設けない方針を決めた。農林水産省は、日本食とかけ離れた日本食レストランが海外で増えているとして、正しいメニューを出す料理店への認証制度を計画していた。しかし、「現地の好みに適応した日本食もある」や、「政府の判断を押しつけるべきではない」などと反発が相次いでいた(5)。
確かに、日本政府が海外で作られる日本食を判定するのは難しい。けれども、日本国外の人達の間で、間違った日本食の印象が広まるのは問題ではないだろうか。事実、各国の料理や食材が世界中に広がり、今では各国の文化に取り入れられている。例えば、ピザは、イタリアからアメリカに伝わった食べ物であるが、アメリカ国内で、ピザと言えば、ドミノピザなどを代表とする大学のカフェテリア食やパーティー時の食事と言う印象が多いだろう。反対に、カリフォルニアロールは、日本にはない「フュージョン」なアジア系の食べ物であるが、アメリカをはじめとする日本国外で純粋な日本食として考えられることは問題ではないだろうか。日本食が世界の人達に、食べ物として取り入れられるのはいいことだが、やはりしっかりと食べ物と合わせて日本文化を世界各国の人々に理解してもらう必要はある。
1)http://www.guardian.co.uk/world/2006/feb/26/japan.foodanddrink
2)http://jasakura.com/kanai/3.htm
3)http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=2009830143556
4)http://amegan.com/blog/mtarchives/003389.html
5)http://blog.goo.ne.jp/kurokuragawa/e/e747a3401e3063b508ad0ac6d19043c6
2010年5月3日月曜日
世界の中での日本:寿司
Posted by
Anna
投稿時間
21:25
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2 件のコメント:
はじめまして。横浜に住む日本人です。
「アメリカでは、内側に海苔、外側に米という巻き方になっているが、これは日本とアメリカの文化の違いが原因であると言われている。」
なるほど・・・!と、驚かされました。
最近、横浜に開店した寿司やさんは、カリフォルニアロールなどアメリカ風寿司が中心です。珍しさもあってか、たくさんの人が並んでいます。私も買いましたが、おいしかったですよ。
庶民の普段の生活では、このような寿司や回転寿司など、手軽に味わえるものが主流です。本来の「日本食」を忘れているのは、案外、日本人かもしれません。
なるほど、やはり人気がありますか。
私ももし日本にカリフォルニアロール類のものが紹介されれば人気が出ると思いました。最近おしゃれなおにぎりを売るお店もよく見られますしね。
けれども日本人は元から「日本食」が本来どのようなものか知ってるので、カリフォルニアロール=寿司=日本食という印象を持つ外国人とは少し違うと思います。自分の国の伝統的な食べ物を工夫しおしゃれにするのはたのっしことではないでしょうか。ただその国の文化を知らない人がその工夫を見てそのものを出んようでき名も野田と思うのが少し間違っているとわら氏は思います。
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