2009年5月7日木曜日

重国籍について

日本では原則的に重国籍は認められていない。

しかし昨年ノーベル賞を受賞した南部陽一郎米シカゴ大名誉教授の件から、国籍法を見直すべきだという声が上がっている。「正直者と有名人がバカを見る制度だ」(河野太郎衆院議員)や、「二重国籍を積極的に認めた方が日本人が世界に雄飛しやすい」(猪口邦子衆院議員)などの意見が上がっており、少々不純な動機ではないのか、日本の利益になればそれでいいのか、と疑わしいところもある。(注1、2)

南部氏の受賞時、各国と日本の報道においての日本人受賞者の数が違うことが、日本人の定義の解釈の違いからおこった混乱を鎮めるために法改正を始めた本当の理由だ。(注1)

国籍選択制度が導入された1985年以来、22歳を迎えた外国帰化者は1万人ほどいる。しかし日本国籍喪失届を実際に届けるのは、その10%程度だという。ここで「正直者と有名人がバカを見る制度」という言葉が入るのだ。たしかに有名になれば日本に二重国籍者だとばれてしまうし、正直者だと初めから素直に届を出してしまうことだろう。(注1)

はじめに、日本では「原則的に」重国籍を認めていないと書いたが、実は重国籍について明確な規定がない。そのため明確に説明できる人がいないのだ。

1985年の改正国籍法により、出生地で国籍が決まる属地主義で生まれた若者は、22歳になるまでに日本籍か外国籍を選択しなければならない。外国籍を取得した場合、そのまま日本籍を喪失することになっている。つまり日本が重国籍を認めなくなったのは1985年以来ということになる。同じクラスのSさんはこのケースにあてはまる。アメリカ人の父親と、日本人の母親を持つ彼女は、現在二重国籍所有者である。22歳に達する前にアメリカ国籍か日本国籍を選ばなければいけない。期限内に提出をしないと、法務大臣から国籍選択の催促をうけ、それでもまだ提出しない場合、日本国籍を喪失することになっている。日本政府へ国籍選択の届けをだすと、日本の法律ではアメリカ籍を持っていないことになる。しかし、日本の法律とアメリカの法律は無関係だ。日本国籍を選んだとしても、日本は相手側に連絡をしないため、アメリカの法律では外国籍を所持したままとなる。そのためSさんは、22歳になるまでに日本国籍を選択しておけば、そのまま二重国籍者となることができる。(注3)

重国籍の若者たちが注意しなければならないのが旅券の使い方だ。日本に出入りするときは日本旅券、アメリカに出入りするときはアメリカ旅券と、気をつけて使わないと法を犯してしまうことになる。日本出入国の時に持っていないはずの外国籍を使ってしまうと、旅券法違反、入国管理法違反となってしまうのだ。くれぐれも旅券法、入管法、戸籍法、そして選挙法などに注意すべきだろう。自分も相手もややこしくなるだけだし、周囲に迷惑がかかってしまうことになる。(注3)

また、出産地で外国籍を得てない者のうち、自らの志望で外国籍を取得した場合は、そのまま日本籍を喪失することになる。私自身はこのケースにあてはまる。私は日本国籍を持っているが、同時にアメリカの永住権をも持っている。私の母親がアメリカ国籍を持っている人と結婚したからだ。私はアメリカで生まれたわけでもなく、また15歳以下の時に両親が私のアメリカ国籍を申請したというわけでもないので、Sさんのケースにあてはまらないのだ。もしアメリカの国籍がほしいならば、自主的に申請する必要がある。なので、アメリカに帰化確定時点で日本国籍は無効となってしまうのだ。もちろん、アメリカは日本へ「彼女はアメリカ人になりましたよー」と伝えるわけでもないので、私はこのまま日本旅券を使うことができる。しかしそれでは法律違反になってしまうので、次に旅券の更新を行うとき、新しい旅券が発行されないばかりでなく、戸籍も削除されてしまう。(注2、3)

政治が不安定な国の人と結婚して、その国の国籍を取得した者は、安全性のため日本籍を捨てることに不安を持つかもしれない。また、日本に残した両親の老後の面倒をみなければいけなくなったとき、面倒な帰化手続きで日本国籍を再び取得し、相手国の籍から離脱しなければいけない。国際結婚をしたものは、両方の家族の元にも自由に出入りでき、好きなだけ滞在することができる。こうしたところから、二重国籍を持っていることでいろいろな利点があることも事実だ。(注1、3)

しかし日本籍をもっていれば、選挙の投票やパスポート取得もできるが、逆に犯罪にも利用されやすくなることもまた事実だ。重国籍が容認されると入国管理が難しくなり、他国の内政干渉やスパイ行為が容易になるからだ。重国籍を持っていることによって、いろいろな税、所得税、贈与税、相続税などを二重に払わなければいけなくなるかもしれないし、もし相手側の国に兵役義務があるならば、それにしたがい兵役を全うしなければいけない。重国籍を持っていることによってアイデンティティーの危機に陥ることもありうる。(注3)

今の日本の国籍法、特に重国籍についての定義はとてもあやふやだ。これから22歳の誕生日を迎える若者たちには明確な定義や説明が必要なのではないだろうか。国籍法は人々の一生を左右できる力をもっている。いくら専門書がたくさんあっても、実務についての説明がないと何が何だかわからない。上でも書いたとおり、日本にいる間は日本国籍だけを持っている状態、けれどアメリカでは実質二重国籍など、いろいろな抜け道が存在するが、重国籍についてのしっかりとしたわかりやすい説明がないため、本人も政府側も混乱してしまう。

近頃では重国籍についての関心が高まり、政府が法改正に向けて動きはじめているが、この動きによって重国籍の扱いが変わりつつある。そうすれば若者たちもスマートな決断ができるようになるかもしれない。

参考:

1.http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081010/stt0810101827007-n1.htm

2.http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081111/stt0811111130000-n1.htm

3. http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Forest/4037/index.html

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